MUGAMICHIRU - POLAND

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MUGAMICHIRU - POLAND

01.Dr (7:03)
02.Gt (4:48)
03.Triplet (11:48)
04.Poland (1:40)
05.Loop (9:11)

冒頭。鳶の高く鋭い声が響き渡る。その生々しさに、そばで寝ていた猫がむっくりと起き上がり、聞き耳を立て、ニャアと一声啼いた。雨垂れのようなドラムスの音が重なり、むせかえるほど濃密なヴィジュアル・イメージを喚起する。どこまでも解き放たれる解放感と、深く暗い海の底で蠢く密室感が同居したような奇妙なカタルシスを覚えてしまう。これが、唯一無二のMUGAMICHIRUの世界。
 
ナカコー(g,sampler)、中村達也(ds)、ナスノミツル(b)が新バンド「MUGAMICHIRU」を結成したと聞いたのは去年の秋のことだ。年末に初ライヴがおこなわれ、以来ライヴを重ねるのみならず、早々にアルバムまで作ってしまった。それがこの『POLAND』である。彼らがこのバンドに強い手応えを感じている証拠だろう。
バンドの結成はナスノ主催のインプロヴィゼーション音楽のイベントで3人が顔を合わせたことがきっかけだという。なので彼らのライヴはあくまでも即興が主体であり、基本となる楽曲はあってもそのつど自在に変化していくというスタイルだろう。今作はMUGAMICHIRUのライヴ音源を素材に、ナスノが中心になってカットアップ・コラージュしたものだ。鳶の声や男性の声素材、ナスノ自らフィールド・レコーディングした現実音などのSEも随所に配置されている。いわば伸びやかで広がりのあるライヴの自由な解放感と、緻密で計算されたスタジオでの構築作業が一体となって、MUGAMICHIRUの濃密な世界観が作り上げられているのである。  
ダークで深遠なアンビエント・ドローン音響は、ナカコーの最近の音楽指向にも通じるものだし、そのイマジネーションに富んだ柔らかく奥深いアンサンブルの妙は、中村が勝井祐二やヤマジカズヒデ、映像作家の豊田利晃らとやっているTWIN TAILからも感じたものだ。あるいはその奔放なコラージュ感覚はナスノの初リーダー作『Prequel Oct.1998 - Mar.1999 + 1』から地続きのようでもある。静寂と喧噪の間を交互に揺れながら、心拍数が徐々に上がっていき意識が遠ざかっていくような体験。3人の経験とスキルとセンスが絡み合って作り上げられた美しく繊細で力強い音のアラベスク。  

MUGAMICHIRU=無が満ちる?夢が充ちる?POLAND=ポーランド? 言葉のない音楽。アーティストからの説明もない。音楽同様、タイトルやバンド名の解釈もまた聴き手に委ねられている。そこで必要とされるのは想像力だ。何も難しいことはない。あるパンクスはこんなことを言っている。

「お前の頭を開いてちょっと気軽になって楽しめ」

2017年5月19日 小野島 大


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